【とらくらカレッジ】伝統工芸とは何か(前編)

なこ

とらくらカレッジの集大成。「伝統工芸とは何か」という根本的な問いに、なこ・けんたの二人が迫る対談です。前編・後編の二回にわたって、伝統工芸について熱く語ります。

この記事のポイント

  1. 工芸作品のグラデーションー工芸の全体像とは?
  2. 産業としての工芸とはー伝統的工芸品の目的から見えてくること
  3. 伝統工芸=手仕事なのか?ー伝統的工芸品における「伝統」

とらくら記者 : けんた

工芸作品は、それぞれの作品が作られた「場所」やそこを取り巻く自然・人々の暮らしを包摂しています。 とらくらでは、「地域」に根ざした伝統工芸を見ていくことで、まちと工芸の関係性・そしてその可能性を探りたいと考えています。

とらくら記者 : なこ

都内の大学三年生です。日本の染織を中心に、幅広く日本文化について学んでいます。 趣味は写真、音楽(サックス)、喫茶店巡りなどです。

工芸の全体像とは?

塚本(以下、つ)「今日は、よろしくお願いします。それにしても、今回のテーマ『伝統工芸とは何か』は掘り下げる甲斐がありますよね。」

長縄(以下、な)「こちらこそ、よろしくお願いします。そもそも、わたしたちが「伝統」とか、「工芸」と言われたときに、それぞれ異なるイメージを形成してしまうと思うのですが、どう思いますか?」

図1:工芸の全体像(塚本作成)

「僕が考えている工芸の全体像は、図1のような感じです。工芸はその名の通り工業と美術の間にある存在で、美術寄りなのか、工業寄りなのかで様々な区分があるのだと思います。ただ、実際にはこの図のように線で分けられているのではなくて、グラデーションのように様々な作品があるのだと思いますが。」

「確かに、そうですよね。この微妙な重なりがポイントですね。生活工芸や民藝などは用即美、つまり実用的でかつ美しいものであるという思想の一方で、美術工芸は実用性というよりかは、そのもの自体の美しさを追求している作品が多いという点で異なってきますよね。伝統工芸はその両者にも重なるものとして考えていますか。」

「うーん…美術工芸でも伝統工芸と言われることがあるので悩んだのですが、伝統工芸はどちらかというと生活の中で使われるもの、用即美の方に近いと思っていて、美術工芸とは隣接はしているんだけど、別物という扱いにしています。」

伝統的工芸品の目的から見えてくること

「そういえば、とらくらカレッジの時に伝統的工芸品と伝統工芸は違うよ、というお話がありましたよね。」

「そうそう、岡野さんの時の会ですよね(とらカレ第1回)。僕は、一般的な伝統工芸のイメージって、意外と経済産業省が伝統的工芸品を指定するときの基準に近いように思います。e-Gov法令検索で、ちょっと見てみましょう。」

「目的は第一条のところに書かれていましたね。」

昭和四十九年法律第五十七号 伝統的工芸品産業の振興に関する法律

 (目的)

 第一条 この法律は、一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的工芸品が、民衆の生活の中ではぐくまれ受け継がれてきたこと及び将来もそれが存在し続ける基盤があることにかんがみ、このような伝統的工芸品の産業の振興を図り、もつて国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

伝統的工芸品産業の振興に関する法律 | e-Gov法令検索

「ここの記載、そして管轄官庁が経済産業省ということからも分かるように、伝統的工芸品は美術工芸(文部科学省・文化庁管轄)に対し、経済の発展に寄与するものとして認識されていますよね。産業としての工芸の振興に重点が置かれているので、文化的な側面はその次に来ているように思います。」

伝統的工芸品における「伝統」

 第二条 経済産業大臣は、産業構造審議会の意見を聴いて、工芸品であつて次の各号に掲げる要件に該当するものを伝統的工芸品として指定するものとする。

一 主として日常生活の用に供されるものであること。

二 その製造過程の主要部分が手工業的であること。

三 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。

四 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。

五 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。

伝統的工芸品産業の振興に関する法律 | e-Gov法令検索

「ここに書かれているように、伝統的工芸品として登録されるためには、日用品であること(観賞用=美術工芸ではない)、手工業的・伝統的な製法であること(=機械に頼りすぎてはいけない)、一定の地域性があること、が必要なようです。そして、ここに含まれる「手仕事的であること」というのは、一般に「伝統工芸」と言われたときに多くの人がイメージすることとも一致するのではないでしょうか。ただ、伝統という言葉をよく吟味したとは言えない定義になっていませんか?」

白熱した議論は後編に続きます。

編集後記

「一人で考えていたことを人に話すとすっきり整理される」ということってよくありますよね。今回の対談では、これまでのとらくらカレッジで学ぶ中で二人が考えてきた「伝統工芸とは何か」について思う存分話すことができたなぁ~と思っています。前編では人によって異なる伝統工芸のイメージから、国が認めている伝統的工芸品とは何なのかまでお話ししました。後編もさらに白熱した対談が繰り広げられます。どうぞお楽しみに!

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けんた

けんた

大学では、都市をフィールドとして学んでいます。また学芸員課程を履修しており、これをきっかけに博物館や美術館に頻繁に行くようになりました。工芸にはまったきっかけは、この美術館巡りをしているときに、東京国立近代美術館工芸館(いまは金沢に移転し、国立工芸館となりました)で様々な工芸作品に出会ったことです。日用のものに込められた美に驚きました。工芸作品は、それぞれの作品が作られた「場所」やそこを取り巻く自然・人々の暮らしを包摂していて、こんなに素晴らしい作品がたくさんあったのか!と感動したのを覚えています。 とらくらでは、「地域」に根ざした伝統工芸を見ていくことで、まちと工芸の関係性・そしてその可能性を探りたいと考えています。

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