布から見つける、日本の文化 vol1 〜ゆかた〜

COLUMN

 こんにちは!なこです。今回から、「布から見つける、日本の文化」をはじめていきます。 どうぞよろしくお願いいたします。

ゆかたを着たこと、ありますか?

 第一回では、「ゆかた」について見ていきます。日本の伝統的衣装のひとつである”ゆかた”。夏場のお祭りなどで「着たことがあるよ!」という方も多いのではないでしょうか?着物よりも身近な要因としては、低価格で購入できること、最近ではセパレート型が普及していて気軽に着られる工夫がされていることも大きいかと思います。

ゆかたについて、知っていますか?

 そんな”ゆかた”について、着たことはあれど、どれくらいのことを知っているでしょうか?ここで、わたしが先ほどから”ゆかた”とひらがなで表記していることが気になった方がいるかもしれません。「”浴衣”じゃないの?」と。実はこれには意味があります。結論から述べると、”浴衣”というのは当て字なのです。

 ”ゆかた”は湯帷子(ゆかたびら)の略であり、元々は室町時代以前の貴人が沐浴の際に着用した麻の単衣をさしました。当時の入浴方法は、サウナのような形態の蒸し風呂でした。そのため、入浴の際に①水蒸気で火傷をしないため ②汗を取るため ③複数人で入るために自分の裸を隠すため に着用されたと言われています。

庶民に広まる”ゆかた”

 こうした「入浴用の衣類」は、元禄時代になると庶民にも広がっていきます。これは、江戸時代後期から銭湯が普及したことと連動しています。それまで庶民は手軽にお風呂に入ることができませんでしたが、銭湯が登場することで皆が入浴するようになったのです。しかし、当初は男女混浴だったため、女性が裸を見られないようにゆかたを着用したようです。その後、混浴でなくなると、人々は湯上りに着用するようになりました。

豊原国周「肌競花の勝婦湯」(引用:https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/446173/1)

木綿の普及

 また、ゆかたの素材としては麻ではなく木綿が一般的になります。江戸時代、日本での木綿の栽培が成功したことに加え、天保の改革で「奢侈禁止令」が出されたことも関係しています。この施策によって、庶民は絹の着用を禁止されてしまいました。その結果、”ゆかた”が夕方以降の肌触りの良い湯上り着として、老若男女問わず寝巻きとして愛用されました。そしてさらに、日本の高温多湿な夏の日常着や外出着として、また盆踊りや夏祭りの揃いゆかたとして(後者については湯帷子以降別の流れがあるので、いずれお話しできたら…。)、日本の衣生活の中で欠かせない存在となったのです。

歌川広重「東都名所 両国夕すゞみ」 (引用:大分県立美術館)

 ちなみに、有松絞り(鳴海しぼり)のようにゆかたが木綿で普及したことによって、大きく発展した染織品もあるんですよ。

さいごに

 今回はゆかたの名前の由来や、歴史について見てきました。何気なく着ていたゆかたにひそむ、入浴文化との深いつながりを感じていただけたでしょうか?今までより、少しでもゆかたや日本文化が身近な存在に感じられるきっかけとなれば幸いです✨

参考文献・サイト一覧

*増田美子・編、『日本服飾史』、東京堂出版、2015、p.133

*きもの文化の伝承と発信のためのプログラム

 http://kimono-bunka.ynu.ac.jp/yukatatoha.html

*ハレトケ

*やまとKIMONOライブラリー

伝統工芸学生アンバサダーとらくらは「伝統工芸を未来と世界に」をビジョンに活動する学生団体です!

なこ

なこ

都内の大学三年生です。日本の染織を中心に、幅広く日本文化について学んでいます。 趣味は写真、音楽(サックス)、喫茶店巡りなどです。

関連記事

特集記事

おすすめ記事

  1. 地域を盛り上げたいという想いから始まった眼鏡ブランド

  2. 金沢取材〜金箔の製造工程 in箔一②

  3. 【注目イベント速報】TOKYO DENTOKOUGEI FACTORY~伝統工芸の職人技とふれあえる5日間~ KITTEに7月21日~25日まで限定ショールームが開設。

  4. うるしの歴史

  5. これは何絞り?絞り染めと生地の違い、見どころ。藤井絞 part2.

  6. 新しい商品を作り上げる姿勢と作り方 藤井絞 part1.

  7.  【丹後ちりめん】絹糸の魔術師ワタマサが仕掛ける織物ブランド

  8. 【着物メディア編集長に聞く!】20代は知らない!?着物業界のリアル。

  9. 【有田焼 李参平窯】陶祖の想いを再興する十四代李参平の挑戦。

  10. 【久留米絣】いにしえのロマンを語る “野村織物” の洋服への挑戦

最近の記事

  1. 日本の伝統工藝を未来につなぐ、「伝え手」と「作り手」になる合宿型プログラム「awaIntern」開催決定!

  2. 【2023夏】宮島の工芸店「signal」

  3. 【2023 夏】しゃもじ!宮島工芸製作所 とらくらin 広島

  4. 2023夏【和紙てまり・藍てまり】松江にしかない!?和紙てまり・藍てまり 

  5. 【完全保存版】京都府の伝統工芸品「西陣織」とは。特徴や歴史、種類まで徹底解説!

  6. 2023夏【和紙ギャラリー】「紙は神に通ず」~ 鹿児島県

  7. 2023夏【高橋鍛冶屋】かぼちゃからお刺身まで!30年以上使える伝統の包丁

  8. 2023夏【亀﨑染工 Part 2】社長さんにインタビュー!

  9. 2023夏【亀﨑染工 Part 1】信頼関係が生む、若手の成長の速さ。工芸のイメージががらりと変わる体験をしました!

  10. 2023夏【岩切美巧堂】熱き職人魂とともに発展し続ける薩摩錫器

ランキング

  1. 1

    加賀友禅と京友禅~武士と貴族の感性の違いが一目瞭然!~

  2. 2

    お茶室のふしぎ。3月のお茶室「釣釜」があるのはなぜ?

  3. 3

    上野戦争について詳しく解説してみた〜②大村益次郎の作戦〜

  4. 4

    伝統工芸×体験2 螺鈿細工

  5. 5

    これは何絞り?絞り染めと生地の違い、見どころ。藤井絞 part2.

  6. 6

    『バカ塗』を世界へ~津軽塗職人父娘の挑戦~ 高森美由紀『ジャパン・ディグニティ』工芸×本

  7. 7

    【博多織 黒木織物】未経験でも”職人”になれる!? (前編)

  8. 8

    上野戦争について詳しく解説してみた〜①彰義隊について〜

  9. 9

    工芸×本 アンバサダーがおすすめする工芸についての本4冊!

  10. 10

    【伝統工芸✖︎大学生】とらくらは約15箇所の工房取材を予定!企画応援者を「スポンサー券」と「NFT」で募集!支援金は取材経費とトロフィー贈呈に

最新 人気 特集
  1. 日本の伝統工藝を未来につなぐ、「伝え手」と「作り手」になる合宿型プログラム「awaIntern」開催決定!

  2. 【2023夏】宮島の工芸店「signal」

  3. 【2023 夏】しゃもじ!宮島工芸製作所 とらくらin 広島

  4. 2023夏【和紙てまり・藍てまり】松江にしかない!?和紙てまり・藍てまり 

  5. 【完全保存版】京都府の伝統工芸品「西陣織」とは。特徴や歴史、種類まで徹底解説!

  6. 2023夏【和紙ギャラリー】「紙は神に通ず」~ 鹿児島県

  7. 2023夏【高橋鍛冶屋】かぼちゃからお刺身まで!30年以上使える伝統の包丁

  8. 2023夏【亀﨑染工 Part 2】社長さんにインタビュー!

  9. 2023夏【亀﨑染工 Part 1】信頼関係が生む、若手の成長の速さ。工芸のイメージががらりと変わる体験をしました!

  10. 2023夏【岩切美巧堂】熱き職人魂とともに発展し続ける薩摩錫器

  1. 地域を盛り上げたいという想いから始まった眼鏡ブランド

  2. 金沢取材〜金箔の製造工程 in箔一②

  3. 【注目イベント速報】TOKYO DENTOKOUGEI FACTORY~伝統工芸の職人技とふれあえる5日間~ KITTEに7月21日~25日まで限定ショールームが開設。

  4. うるしの歴史

  5. これは何絞り?絞り染めと生地の違い、見どころ。藤井絞 part2.

  6. 新しい商品を作り上げる姿勢と作り方 藤井絞 part1.

  7.  【丹後ちりめん】絹糸の魔術師ワタマサが仕掛ける織物ブランド

  8. 【着物メディア編集長に聞く!】20代は知らない!?着物業界のリアル。

  9. 【有田焼 李参平窯】陶祖の想いを再興する十四代李参平の挑戦。

  10. 【久留米絣】いにしえのロマンを語る “野村織物” の洋服への挑戦

  1. 着物ってどうやってカタチができるの?和服縫製のプロに聞いてみました!

  2. これは何絞り?絞り染めと生地の違い、見どころ。藤井絞 part2.

  3. 新しい商品を作り上げる姿勢と作り方 藤井絞 part1.

  4.  【丹後ちりめん】絹糸の魔術師ワタマサが仕掛ける織物ブランド

  5. 【着物メディア編集長に聞く!】20代は知らない!?着物業界のリアル。

  6. 【有田焼 李参平窯】陶祖の想いを再興する十四代李参平の挑戦。

  7. 【久留米絣】いにしえのロマンを語る “野村織物” の洋服への挑戦

  8. 【アリタポーセリンラボ】世界のラグジュアリー市場へ挑む秘策とは。

  9. 【博多織 黒木織物】異業種とのコラボに挑戦!? (後編)

  10. 【博多織 黒木織物】未経験でも”職人”になれる!? (前編)

TOP