【小石原焼 カネハ窯】標高500m大自然と共生する”半農半陶”とは!?

INTERVIEW

とらくら記者:かっさん

大阪府立大学経済データサイエンス課程3年

祖母が丹後ちりめんの職人、父が板金会社の社長でした。伝統工芸学生アンバサダーとらくら代表、株式会社wakonartなど複数の文化系企業へ参画し、伝統工芸・伝統文化の継承に力を入れる。

今回は福岡県南東、標高500mに位置する東峰村にある小石原焼窯元「カネハ窯」へ取材でした。17世紀後半に誕生した福岡県の伝統的工芸品で民藝運動の発起人柳宗悦に「民藝の極み」と称賛された小石原焼。そんな小石原焼を昔ながらの生活習慣で作る職人熊谷さんに取材しました!

小石原焼 とは

小石原には50軒にのぼる窯元が点在し、特に国道211号線沿いと皿山地区に集中しています。天和2年(1682年)に黒田三代藩主光之が肥前伊万里の陶工を招き、中国風の磁器を伝え、この頃すでに小石原にあった高取焼と、この窯が交流することにより、中野焼が形成されました。昭和の時代になると一般的に「小石原焼」と呼ばれるようになりました。

かつては皿山を中心に、八戸で二基の共同窯により、大正から昭和のはじめ頃までは英彦山参拝のみやげの徳利や大型カメ、鉢、皿、すり鉢などの荒物製品づくりがほとんどだったそうです。やがて民陶ブームの到来によって共同窯は解消し、個人窯元が増え、小物づくりなども活発化しました。

昭和33年ブリュッセルで開かれた万国博覧会日本館第三部出品でのグランプリ受賞、昭和36年の日本工芸館小石原分館の設立も今日の小石原焼発展に弾みをつけたようです。そして、昭和50年には通産省の伝統的工芸品に指定されました。

生活雑器としての道を歩みながら用と美を確立した小石原焼には、飛びかんな、はけ目、櫛目、指描き、流し掛け、打ち掛けなどの独特の技法が生きています。

そして、それが素朴で温かい持ち味をだしているのです。多くの後継者や窯元はそんな伝統の技を大切に受け継ぎながら、小石原焼の発展を願ってさらに新しい作風の確立をめざしています。

http://www.koishiwara.com/hajime.htm

写真:カネハ窯 工房の写真

今回の記事のポイント!

  1. カネハ窯は家内産業で営む小石原焼の窯元で現在3代目
  2. 半農半陶という一年に米作りと作陶を同時に行う生活スタイル
  3. 1個のうつわからオーダーメイド可能

熊谷さん、よろしくお願いします!

はい、よろしくお願いします。

写真:取材に応じる熊谷さん

まずカネハ窯について教えてください

カネハ窯は350年の歴史を持つ伝統的工芸品小石原焼の窯元です。昭和38年(1963年)に創業し、現在で3代目です。私のおじいちゃんにあたる初代 範造は他に先駆けて色物の器を手がけました。次の2代目泰生は三尺もある大皿や大きな水瓶など「大物づくりが好き」で、灰釉や鉄釉を使った渋みのある色の器が多いです。そして、三代目の私は化粧土を利用した色の組み合わせを楽しむ食器づくりや、手びねりによる花器の制作をしています。窯場の周りには、しゃくなげや、つつじや、コスモスなどの四季の花で彩り、自然の中でゆっくりと過ごせるような窯元です。また、カネハ窯は小石原焼の窯元の中でも珍しい「半農半陶」を行っています。一年の間でお米づくりと作陶をバランスよく行うライフスタイルです。

写真:熊谷さんが作ったお米と小石原焼のうつわ

写真:取材に応じる熊谷さん

熊谷さんが1代目・2代目と違って、作陶で意識されていることはありますか

1代目・2代目は高度な技術で大型のうつわを作り、それが売れるという事実で満足していました。確かに当時はバブル期だったので、かなり売れていました。ただ、バブルが弾けて大型作品の需要も減りました。なので私は技術ももちろん習得していますが、付加価値としてお客さんと丁寧にコミュニケーションを取り、より満足度してもらえるよう意識しています。

写真:ろくろを実演してくださる熊谷さん

お客さんとの密なコミュニケーション、僕も陶器ファンなのですごく嬉しいです。そういった意味合いもあって、陶芸体験を活発にされているのですか

はい、そうです。陶芸体験は私たちのような家族で営んでいる工房では、普通に考えれば、コストパフォーマンスが悪いです。ただ、お客さんが楽しんでくれて小石原焼も深く知ってくれるので嬉しいです。また、濃いファンになってくださる方もいて結果的に売上にも繋がっています。

写真:熊谷さんが制作したお猪口

国指定の伝統工芸士の方に1時間3000円で指導いただけるの贅沢ですね。また、お客さんとのコミュニケーションという点で、オーダーメイドの受付もされているのですか。

オーダーメイドも承っています。一個のお茶碗から大量の平皿まで幅広く受け付けています。

一個のうつわからオーダーメイドできるの良いですね。特別なギフトにもなりそうです。オーダーメイドはどういう注文の流れになりますか?

まず、手元にある小石原焼ではないうつわや既存の小石原焼のうつわを参考に、形やサイズ、紋様を話し合うことになります。その後、2ヶ月ほど納期をもらって、成形と窯焚を実施します。直接対面でも良いですし、zoomでも承っています。

オーダーメイドのご相談はこちらから

TEL 0946-74-2203
E-mail kaneha@koishiwara.com
(カネハ窯)

なるほど、自分だけのうつわ作れるの楽しいですね。少し話は変わるのですが、熊谷さんが小石原焼のうつわを作る際に、強いて言えば一番こだわっている工程ありますか?

土選びです。小石原焼の大きな特徴として、原材料となる土を小石原で採取しています。陶土も釉薬もその土から成り立っています。しかし、土にも良い土と悪い土があって、粘りが強い・締まりが強い・コシがあるなど様々な観点で精査しています。

写真:土のこだわりを語る熊谷さん

そういった素材のこだわりは、冒頭の「半農半陶」という生活スタイルにも通じる点があるのでしょうか

お米づくりは自然の影響を大きく受けます。また1年に一度しか作ることができません。その緊張感からか、素材含め作陶する際は自然への感謝を忘れません。

写真:熊谷さんが所有する田んぼ

最後にこれからどういう取り組みをされていく予定ですか

前半でも少しお話ししたのですが、作品の良さはもちろんなのですが、100均のうつわには無い付加価値を伝えたいです。自分の制作への思いや自然との関わり方、半農半陶も含め自分自身のファン作りを頑張りたいです。オフラインだけでなく、InstagramなどのSNSも活用して人との繋がりを増やしていきたいです。

写真:取材に応じる熊谷さん

編集後記

カネハ窯のある場所は、福岡博多駅から車で1時間半の山奥。「自然との共生」という言葉に偽りがないほど、自然豊かな場所にポツンと工房が立っていました。その存在感が心にグッときました。自然と工芸は切り離せない関係であると痛感しました。自分の手元にあるうつわをもっと大切にしようと思います!

写真:カネハ窯 工房の周りの景色

写真:カネハ窯 工房の周りの景色

ご案内

カネハ窯で陶芸体験したい人へ

・・◆カネハ窯 陶芸体験◆・・

所要時間…約1時間~1時間30分
料金…3,300円

初心者でも気軽に体験でき、
楽しむことができます。
仕上げと焼き上げは窯元が行います。
※湯のみ、お茶碗程度の大きさ2個くらい
大きな作品の場合は
別途料金をいただきます。

※事前にご予約をお願いします。
TEL 0946-74-2203
E-mail kaneha@koishiwara.com
(カネハ窯)

※1名様から15名様まで受け付けます。
詳しい内容などは、お問い合せ下さい。

http://www.koishiwara.com/

カネハ窯の小石原焼を購入したい人へ

伝統工芸学生アンバサダーとらくらの白江が、現地の工房で選んだ小石原焼を販売しています。売上の一部はとらくらの活動経費に活用されます。ぜひ応援購入のほどよろしくお願いいたします!

取材協力:小石原焼 窯元 カネハ窯 熊谷裕介氏

カネハ窯 公式HP:http://www.koishiwara.com/

写真撮影:伝統工芸学生アンバサダー とらくら 白江勝行

記事執筆:伝統工芸学生アンバサダー とらくら 白江勝行

伝統工芸学生アンバサダーとらくらは「伝統工芸を未来と世界に」をビジョンに活動する学生団体です!

メディア編集部

メディア編集部

とらくらメディア編集部です。日本の伝統工芸品を分かりやすく解説します。

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