今回、私たちは青森県弘前市にある弘前こぎん研究所に取材させていただきました。こぎん刺しは織物で柄を表現するときのように並縫いで切り返しながら刺し進めます。専用の長い針を使って布の端から端へと針は抜かずに刺すため、大きな面積になるほど大変です。
また藍地に白糸という、かつての限られた色の中で紡ぎ出されたこぎん刺しの模様は工夫が凝らされています。ここから担い手である、農村の女性たちの美意識を感じとることができます。こぎん刺しは彼女たちの暮らしに喜びや励みを与えてくれるものだったのでしょう。
こぎん刺しはワークショップや製作キット、本などで産地を越えて現在多くの人に親しまれています。弘前こぎん研究所ではオーストラリアの手芸サークルが体験に訪れたこともあるそうです。
津軽こぎん刺しの歴史
津軽こぎん刺しは農民の制約された暮らしから生み出された工芸で、江戸時代の津軽地方では、農民は麻の着物を着ることしか許されていませんでした。麻布に木綿の糸で縫い目を連ね、保温と耐久性を高めることで山仕事や厳しい冬の寒さに耐えうるようにしたのです。
実用的な技術として農民の衣類に使われていた、地刺と呼ばれるこぎん刺しですが農村の暮らしが豊かになるにつれて衰退していきました。しかしその後、民藝運動の立役者である柳宗悦によって評価され、全国に知られるようになりました。現在では、ポーチやスマホケースといったライフスタイルに合う実用品に、模様刺しとしてこぎん刺しが使われています。
取材・見学を経た感想
こぎん刺しは比較的単純な作業で作り上げられることに加え、必要な道具や材料は針、布、糸といった準備しやすいものです。このように誰でも簡単にすぐ始められる工芸であるため、広く普及していったのではないかと考えました。また、何といっても限られた色の中で作られる模様の美しさに惹かれるものがあります。江戸時代、実用的な面を備えつつも可憐な柄を刺し進めることで農村の女性たちに楽しみを与えたであろうこぎん刺し。それを今を生きる私たちも共有しているということに、変わることのない手仕事への喜びや愛着を感じとることができました。
皆さんもぜひチクチクと手間暇かけて作り上げられる津軽こぎん刺しの味わい深さを見て、感じて、そして実際に体験してみてほしいと思います。
取材に協力してくださった弘前こぎん研究所の皆さんに感謝申し上げます。
ありがとうございました!
今回私達とらくらアンバサダーが遠方取材で訪れた全国15カ所の工房に「Z世代が本気で惚れた伝統工芸品大賞のトロフィー」を置いて帰りました。若者の力で工芸業界を盛り上げたい、そんな一心で日々活動をしています。
- 弘前こぎん研究所↓
執筆者:きなこ (清原那々子)
工作や手芸などなど、手仕事が好きで幼いころから没頭してきました。 そんな手仕事の枠の中でも歴史と高い技術を持つ伝統工芸のことをもっと知りたいと思ってます!