とらくら記者:かっさん
大阪府立大学経済データサイエンス課程3年
祖母が丹後ちりめんの職人、父が板金会社の社長でした。伝統工芸学生アンバサダーとらくら代表、株式会社wakonartなど複数の文化系企業へ参画し、伝統工芸・伝統文化の継承に力を入れる。
今回は有田焼「陶祖李参平窯」へ取材でした。400年の歴史を持つ有田焼の祖李参平の直系の子孫十四代李参平さんに、有田焼の歴史や今後の取り組みを取材してきました!
有田焼とは
“有田焼は佐賀県有田町を中心に焼かれる磁器です。16世紀末に、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に連れて帰った朝鮮人陶工 「金ケ江三兵衛(李参平)」が泉山で磁器の原料となる陶石を発見し有田焼が誕生しました。日本で初めて磁器が焼かれた産地として、それから400年間、食器や美術工芸品として多くの人に愛されてきました。1977年には国の伝統的工芸品にも指定されました。
写真:陶祖李参平窯の「花形小鉢 瑠璃・白磁」
今回の記事のポイント!
- 有田焼陶祖は金ヶ江三兵衛(李参平)
- 十四代李参平は「素材」を徹底的にこだわる
- 有田焼は日韓を繋ぐ1つの文化財でもある
十四代李参平さん、よろしくお願いします!
はい、よろしくお願いします。
写真:取材に応じる十四代李参平さん
まず簡単に自己紹介をお願いします
金ヶ江省平と言います。現在有田焼陶祖李参平窯を主宰しています。20歳の頃から土に触れ、2002年に九州の伝統工芸の未来を担う若手工芸家を支援する制度に選ばれ、韓国・利川で現在高麗青磁の技術保持者である奨輝陶窯の崔仁奎先生に師事し作陶活動を続けてきました。現在「初期伊万里」の再興に取り組んでいます。
写真:泉山磁石場にある、李参平が発見した磁石場を示す石碑
李参平窯はどういった歴史をお持ちですか
まず「李参平」は、豊臣秀吉の朝鮮出兵を機に日本へ訪れた陶工「金ヶ江三兵衛」を指します。当時は備前焼、唐津焼などの陶器は日本で製造されていましたが、磁器の製造はまだでした。初代李参平は磁器の原料となる陶石を発見し、有田焼が誕生しました。現在その十四代目が私です。
有田焼の祖が李参平さんなのですね。初代から十四代目までどのように継承されてきましたか
金ヶ江三兵衛(初代李参平) 一族は、初代から四代目までは作陶をしていました。しかし、四代目のときに焼成がうまくいかず、製品が出来上がらない状態が起きてしまい廃業しました。それから窯元としての直系の子孫は活動せず、名前と文書を継承しました。私の父である十三代金ヶ江三兵衛(金ヶ江義人)が国鉄を退職後に「焼物を作らないことは先祖にも子孫にも申し訳ない」として陶祖李参平窯を再興します。それと同時に私も将来継ぐことを決心しました。
約400年。波乱万丈ですね
写真:初代李参平の像
ところで、十四代李参平さんの有田焼の特徴を一言で言うとどのような点ですか?
「初期伊万里」の再興を目指すこだわりです。
初期伊万里とはどのようなものですか?
「素材」です。400年前に有田焼の原材料となる陶石を現在の「泉山磁石場」で初代李参平が発見しました。ここの陶石は粘り気が弱く、有田焼の製造方法が近代化されるとともに天草陶石と入れ替わったため、現在の有田焼の作り
方とは相性が悪いのです。そのため、他の有田焼の窯元の多くは粘り気があり石膏型での成形がしやすい天草陶石を使っています。しかし、私は泉山磁石場の陶石を使いろくろ成形で作陶しています。割れやすいので試行錯誤で行っています。数量は多くはできないですが、お客さんに手にとってもらい歴史や文化を肌で感じて欲しいです。
写真:泉山磁石場で起源を語る十四代李参平さん
400年の時間をうつわで感じられるのがステキです。ちなみに十四代李参平さんの有田焼を購入するにはどうしたら良いですか、、
佐賀県有田の陶祖李参平窯ギャラリーショップかオンラインショップで購入可能です。
写真:佐賀県有田の店舗で写真に応じる十四代李参平さん
写真:お猪口制作の過程を語る十四代李参平さん
最後に十四代目李参平さんから読者へメッセージをいただきたいです
有田焼は初代李参平によって朝鮮から技法が伝来しました。偶然にも有田で磁器の原材料を発見し、有田周辺に唐津焼の技術を持った職人がいました。そして、中国での動乱があったため東南アジア、ヨーロッパへの海外輸出(オランダ東インド会社による)の白羽の矢が当たり中国の絵付けの技術を早い時期に取り入れることができるという偶然が重なり現在の有田焼になります。今では日本の伝統的な工芸品の一つでもあります。私は、有田焼を日韓交流のための文化財としても多くの人にもっと親しまれて欲しいと思っています。ぜひ一度有田に訪れたりいただき、李参平の歴史を巡って欲しいです。
写真:取材に応じる十四代李参平さん
色んな国の文化の融合が有田焼なのですね。広い視野を持ってもう一度歴史を学び直してみようと思います。ありがとうございました!
編集後記
十四代李参平さんが優しく親切に有田焼のルーツを教えてくださいました。「日本の伝統工芸品」と日本だけの文化のように思われますが、そのルーツを辿ると海外の高い技術と日本独特の風土の融合がありました。日本の伝統工芸品は日本人だけが継承すべき文化ではなく、人類の文化ではないかと思いました。広い視野を持ってこれから取材や企画に取り組んでいこうと思います。ちなみに、徳利とお猪口のセット購入しました。また李参平さんのサインもいただきました。美味しい地酒と合わせて楽しもうと思います!次回の記事もお楽しみに!
写真:とらくら記者 白江のために特別にサインを書いてくださる十四代李参平さん
写真:十四代李参平さんととらくら記者 白江
読者へお知らせ
李参平窯のオンラインショップはこちらです。数に限りがあります。お早めにお買い求めください!