はじめに
今回、インタビューさせていただいたのは福井県鯖江市の「KISSO」です。鯖江市と聞いて、「めがね」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。KISSOは「めがねのまち鯖江」にあるメガネ材料商社です。鯖江市を「めがね」の産地として多くの方に認知してもらい、地域を盛り上げるために「KISSO」が取り組んできたこと、想いについてお聞きしました。
伝統産業としての鯖江眼鏡
まずは、「鯖江めがね」について少しお話します。1905年に始まっためがねづくりは、手作業や農家ならではの知識を活かしながら産地を始め、福井・鯖江のまち全体が、一つの大きな工場としてめがねづくり作りを行うようになりました。
第二次世界大戦が終わり、めがねの需要が高まりブランドが数多く生まれました。1983年には、世界で初めて軽くて丈夫なチタン製めがねを開発・生産をおこなうことで、国際的なめがねの産地としての地域を築き上げていきます。現在、福井県は福井市や鯖江市を中心に日本製めがねフレームの約95%を生産し、世界最高品質のめがねを届けています。
アクセサリーなどを作り始めたきっかけ
はじめは、日本のチタンの材料などを海外に販売したり、海外のフレームを輸入して付加価値をつけて売ったりと様々な取り組みを行っていました。「日本の良いものを世界に届けたい」という想いを軸において、何か新しい取り組みをしようとしていたKISSOでしたが、2009年に起きたリーマンショックにより大きな影響を受けたそうです。
その後、産地がすたれる前に、自分でものを作って自分で売る力をつけようと地域でめがね産業を行っている方々と一緒に勉強をし始め、輸入していたメガネフレームの材料であるアセテートを使用して何か作ろうと取り組み始めたそうです。KISSOでは複数の板をはり合わせる技術を持っており、綿花からできているアセテートの板の組み合わせ方によって個性的な色合いやデザインを作り上げることができます。この技術を使用して、商品づくりを始めました。
初めはペーパーナイフを作りましたが、材料商社であったKISSOには加工する機械がなく、他の場所に依頼する必要があったため、値段がとても高くなってしまったそうです。中国など他の場所に依頼して安くすることはできましたが、モノづくりの軸にあったのは、「鯖江で何かをしたい」、「産地を盛り上げたい」という想いでした。何か自分たちで作れるものはないかと考えていた時に、一人の職人さんが指輪を作ってきたそうです。このことが、KOSSOのアクセサリーブランドの始まりとなりました。
アクセサリーKISSOについて
現在、アクセサリーKISSOでは、リング、ピアス、イヤーカフ、バングルなどをはじめとした、主に女性向けのアクセサリーを作っています。職人さんが手作業で柄をくみ上げていくことで、独特の模様を作り上げています。カラフルで可愛らしく、ワクワクするような、心ときめく色柄です。また、基本的な色以外はその時のトレンドなどによって変化していきます。
セルロースアセテートという、コットンを主原料とした天然素材由来のバイオマスな材料を使用して作られているため、軽くて、アレルギーが少なく肌に優しいことが特徴です。素材を削り出し、ひとつひとつ丁寧に磨き上げた「世界にひとつ」のアクセサリーを届けています。
新たな取り組み
アクセサリーKISSOでは、新たな取り組みとしてメタバーズ上でジュエリーブランドの制作を行っているそうです。デジタル化が進んでいる現代ならではの取り組みです。伝統産業としてこれから発展していくためには、制作過程、価値観の共有を行い、現地に実際に足を運んでもらうことが必要だとおっしゃっていました。
素材を加工することで価値がつきますが、デジタル上でアクセサリーブランドを展開することで新たな価値が生まれます。また、デジタル上では、より長く使ってもらうことができます。海外進出も視野に入れ、住んでいる場所関係なくより多くの人に興味を持ってもらう、知ってもらうきっかけを作ろうとしています。
おわりに
今回の取材を通して、めがねのフレームを使用したアクセサリーができるまでの過程について詳しく知ることができました。試行錯誤しながらも、「産地を盛り上げたい」という想いを軸に、めがねの材料商社として地域産業を支えるだけではなくて、自らも行動して産地を盛り上げていることがとても印象的でした。
また、今後の展開ではデジタル化が進んでいる現代に合わせた「モノ」づくり、取り組みを行っており、とても興味深かったです。本当に残していきたいもの、想いを大切にしながら、これからどのようなことができるのか、様々な立場から考えていかなければならないと感じました。色合いが鮮やかでポップなデザインが特徴のKISSOのアクセサリー。この記事を通して、少しでも多くの方に「世界に一つ」の自分だけのアクセサリーを見つけてもらえたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
KISSO
執筆者:山下奈桜