加賀友禅と京友禅~武士と貴族の感性の違いが一目瞭然!~

COLUMN

 聞き馴染みがある「友禅」という名称は宮崎友禅という江戸時代の扇面師に由来しています。元禄時代、京都に住んでいた宮崎友禅の画風を取り入れた華麗な模様染めとして京都で誕生したことが始まりで、その後京都では京友禅として独自の進化を遂げました。一方金沢では宮崎友禅が晩年移り住んだ影響により、お国染めから加賀友禅として発展しました。同じ人物から波及した京都の京友禅と金沢の加賀友禅ですが、それぞれ異なった趣が今に伝わっています。

 加賀友禅は藍、臙脂、黄土、草、古代紫の「加賀五彩」を基調としてしっとりと仕上げられることが特徴です。また、「虫食い」や「先ぼかし」などの技法を使って、草花のモチーフを写実的に表現しています。

自然の美を上品にまとう、「加賀友禅」の着物はいかが?
引用元・fujingaho.jp

 一方で京友禅は無機的な模様を用い、きらびやかな装飾を施すことが特徴です。加賀友禅とは異なり、金箔やプラチナ箔を置いたり金銀砂子を撒いたりする金加工や刺繍が最終工程で加えられることによってさらに華やかさが増しています。

京友禅ってどんな振袖のことなのか、教えて欲しい 〜岩手県一関市和とわ総本店〜 | 振袖選びは岩手県一関市で200有余年続いている振袖専門店和とわで!!
引用元・furisode.wa-towa.jp

 繊細にしっとりと絵画風に仕上げる加賀友禅と、華やかな色と柄を施す京友禅は対照的な存在であると言えます。金沢は武士社会として前田家の統治下で栄えた一方、京都は古くからの都として公家たちの住まう所でした。武家文化ではわびさびを、貴族文化では華やかさを重視する感性の違いが民衆の文化や気質にも影響して、産地の着物の柄に反映されているのだろうと考えられます。ぜひ皆さんも加賀友禅と京友禅を比べて、武士と貴族の感性の違いを楽しんでみて下さいね!

参考資料

・羽田工房 京友禅の歴史 http://www.hatakoubou.com/yuzen/history.html                  ・KOUGEI JAPAN 京友禅 https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/kyoyuzen

伝統工芸学生アンバサダーとらくらは「伝統工芸を未来と世界に」をビジョンに活動する学生団体です!

きなこ

きなこ

工作や手芸などなど、手仕事が好きで幼いころから没頭してきました。 そんな手仕事の枠の中でも歴史と高い技術を持つ伝統工芸のことをもっと知りたいと思っています!

関連記事

特集記事

おすすめ記事

  1. 地域を盛り上げたいという想いから始まった眼鏡ブランド

  2. 金沢取材〜金箔の製造工程 in箔一②

  3. 【注目イベント速報】TOKYO DENTOKOUGEI FACTORY~伝統工芸の職人技とふれあえる5日間~ KITTEに7月21日~25日まで限定ショールームが開設。

  4. うるしの歴史

  5. これは何絞り?絞り染めと生地の違い、見どころ。藤井絞 part2.

  6. 新しい商品を作り上げる姿勢と作り方 藤井絞 part1.

  7.  【丹後ちりめん】絹糸の魔術師ワタマサが仕掛ける織物ブランド

  8. 【着物メディア編集長に聞く!】20代は知らない!?着物業界のリアル。

  9. 【有田焼 李参平窯】陶祖の想いを再興する十四代李参平の挑戦。

  10. 【久留米絣】いにしえのロマンを語る “野村織物” の洋服への挑戦

最近の記事

  1. 2023夏【和紙てまり・藍てまり】松江にしかない!?和紙てまり・藍てまり 

  2. 【完全保存版】京都府の伝統工芸品「西陣織」とは。特徴や歴史、種類まで徹底解説!

  3. 2023夏【和紙ギャラリー】「紙は神に通ず」~ 鹿児島県

  4. 2023夏【高橋鍛冶屋】かぼちゃからお刺身まで!30年以上使える伝統の包丁

  5. 2023夏【亀﨑染工 Part 2】社長さんにインタビュー!

  6. 2023夏【亀﨑染工 Part 1】信頼関係が生む、若手の成長の速さ。工芸のイメージががらりと変わる体験をしました!

  7. 2023夏【岩切美巧堂】熱き職人魂とともに発展し続ける薩摩錫器

  8. 【メディア掲載実績】日本最大級の工芸品メディア『BECOS Journal』様に「伝統工芸の後継者不足問題を解決する取り組み」としてご紹介。

  9. 次世代へ繋ぐ技術 —デニム手描き友禅染「桑山」

  10. 世界に羽ばたく「ものづくり」の始まり

ランキング

  1. 1

    加賀友禅と京友禅~武士と貴族の感性の違いが一目瞭然!~

  2. 2

    お茶室のふしぎ。3月のお茶室「釣釜」があるのはなぜ?

  3. 3

    上野戦争について詳しく解説してみた〜②大村益次郎の作戦〜

  4. 4

    伝統工芸×体験2 螺鈿細工

  5. 5

    『バカ塗』を世界へ~津軽塗職人父娘の挑戦~ 高森美由紀『ジャパン・ディグニティ』工芸×本

  6. 6

    これは何絞り?絞り染めと生地の違い、見どころ。藤井絞 part2.

  7. 7

    【博多織 黒木織物】未経験でも”職人”になれる!? (前編)

  8. 8

    上野戦争について詳しく解説してみた〜①彰義隊について〜

  9. 9

    【伝統工芸✖︎大学生】とらくらは約15箇所の工房取材を予定!企画応援者を「スポンサー券」と「NFT」で募集!支援金は取材経費とトロフィー贈呈に

  10. 10

    塗りで魅せる津軽塗り ―木村漆工房を訪ねて―

最新 人気 特集
  1. 2023夏【和紙てまり・藍てまり】松江にしかない!?和紙てまり・藍てまり 

  2. 【完全保存版】京都府の伝統工芸品「西陣織」とは。特徴や歴史、種類まで徹底解説!

  3. 2023夏【和紙ギャラリー】「紙は神に通ず」~ 鹿児島県

  4. 2023夏【高橋鍛冶屋】かぼちゃからお刺身まで!30年以上使える伝統の包丁

  5. 2023夏【亀﨑染工 Part 2】社長さんにインタビュー!

  6. 2023夏【亀﨑染工 Part 1】信頼関係が生む、若手の成長の速さ。工芸のイメージががらりと変わる体験をしました!

  7. 2023夏【岩切美巧堂】熱き職人魂とともに発展し続ける薩摩錫器

  8. 【メディア掲載実績】日本最大級の工芸品メディア『BECOS Journal』様に「伝統工芸の後継者不足問題を解決する取り組み」としてご紹介。

  9. 次世代へ繋ぐ技術 —デニム手描き友禅染「桑山」

  10. 世界に羽ばたく「ものづくり」の始まり

  1. 地域を盛り上げたいという想いから始まった眼鏡ブランド

  2. 金沢取材〜金箔の製造工程 in箔一②

  3. 【注目イベント速報】TOKYO DENTOKOUGEI FACTORY~伝統工芸の職人技とふれあえる5日間~ KITTEに7月21日~25日まで限定ショールームが開設。

  4. うるしの歴史

  5. これは何絞り?絞り染めと生地の違い、見どころ。藤井絞 part2.

  6. 新しい商品を作り上げる姿勢と作り方 藤井絞 part1.

  7.  【丹後ちりめん】絹糸の魔術師ワタマサが仕掛ける織物ブランド

  8. 【着物メディア編集長に聞く!】20代は知らない!?着物業界のリアル。

  9. 【有田焼 李参平窯】陶祖の想いを再興する十四代李参平の挑戦。

  10. 【久留米絣】いにしえのロマンを語る “野村織物” の洋服への挑戦

  1. 着物ってどうやってカタチができるの?和服縫製のプロに聞いてみました!

  2. これは何絞り?絞り染めと生地の違い、見どころ。藤井絞 part2.

  3. 新しい商品を作り上げる姿勢と作り方 藤井絞 part1.

  4.  【丹後ちりめん】絹糸の魔術師ワタマサが仕掛ける織物ブランド

  5. 【着物メディア編集長に聞く!】20代は知らない!?着物業界のリアル。

  6. 【有田焼 李参平窯】陶祖の想いを再興する十四代李参平の挑戦。

  7. 【久留米絣】いにしえのロマンを語る “野村織物” の洋服への挑戦

  8. 【アリタポーセリンラボ】世界のラグジュアリー市場へ挑む秘策とは。

  9. 【博多織 黒木織物】異業種とのコラボに挑戦!? (後編)

  10. 【博多織 黒木織物】未経験でも”職人”になれる!? (前編)

TOP