👀注目の展覧会👀日本初のグラフィックデザイナー・小村雪岱と「見立て」の工芸 連載:工芸×美術館 Vol.2

COLUMN

◆ 「小村雪岱」ってどんな人?

東京・日本橋にある、三井記念美術館で開催中の展覧会「小村雪岱スタイル」。この展覧会では、様々な分野で活躍した小村雪岱の作品を一挙に振り返る大回顧展です。東京美術学校日本画科選科を卒業後、國華社や資生堂といった会社で活躍するとともに、歌舞伎などの舞台芸術や新聞小説の挿絵なども手がけました。ちなみに、資生堂に所属していた36歳の時、彼は資生堂書体を考案したんです。今でも使われているあの独特な字体は小村雪岱によるものだったんですね。

肖像写真出典:20180215_小村雪岱随筆集_表紙表.jpg (1200×900) (sanadakobundo.com)

雪岱が基礎を作った資生堂書体  出典:https://www.ginza.jp/wp-content/uploads/ag2018backstory4.jpg

しかし、53歳という若さで亡くなった後、近年までなかなか注目されてきませんでした。だからこそ、今回は小村雪岱を見直すうえで注目すべき展覧会なのです。

◆ 小村雪岱と同時代の工芸・小村雪岱にインスパイアされた現代の工芸作品たち

 今回の展覧会では、小村雪岱と同時代に生きた作家たちの工芸作品や作品を「見立て」て制作された現代の工芸作家の作品が合わせて展示されています。

現代の工芸作品の中でも注目したいのが、この作品。

彦十蒔絵 見立漆器《苫舟日本橋蒔絵》

この作品は、雪岱が初めて泉鏡花の装幀を行った作品である『日本橋』に着想を得て制作された作品です。雪岱の装幀を見てみると、水路の両岸に立ち並ぶ蔵は一見、シンメトリーなデザインに見えますが、蔵の細かい意匠や色彩的なアクセントとなっている赤・青・黄色の蝶が画面を美しく見せています。

画像出典:https://yohak-u.net/wp-content/uploads/2019/10/da9d99461d43b9ad0eee080cdf60c691-e1571971163674.jpg

作品の中にある舟を取り出してみると、まさにこんな作品になりますよね。舟には蝶が舞っていて、作品の中にかわいらしさを出していることが分かります。この写真ではわかりづらいのですが、船体の下部には波も描かれており、まさに雪岱の表紙を「見立て」たものと言えます。

小村雪岱に注目が集まっているので、なかなか工芸について触れられている感想が少ないのですが、この記事を読んで改めて彼と一緒に並んでいる工芸作品たちを見てみてはいかがでしょうか。東京展の会期は間もなく終了します。事前予約も必要なので、早めにチェックして、ぜひ見に行ってくださいね。

◆ 展覧会の会期・巡回予定

東京展

三井記念美術館 2021年2月6日~4月18日

富山展

富山県水墨美術館 2021年4月27日~6月13日

山口展

山口県立美術館 2021年7月8日~8月29日

参考文献

『小村雪岱スタイル;江戸の粋から東京モダンへ』展覧会図録

伝統工芸学生アンバサダーとらくらは「伝統工芸を未来と世界に」をビジョンに活動する学生団体です!

けんた

けんた

大学では、都市をフィールドとして学んでいます。また学芸員課程を履修しており、これをきっかけに博物館や美術館に頻繁に行くようになりました。工芸にはまったきっかけは、この美術館巡りをしているときに、東京国立近代美術館工芸館(いまは金沢に移転し、国立工芸館となりました)で様々な工芸作品に出会ったことです。日用のものに込められた美に驚きました。工芸作品は、それぞれの作品が作られた「場所」やそこを取り巻く自然・人々の暮らしを包摂していて、こんなに素晴らしい作品がたくさんあったのか!と感動したのを覚えています。 とらくらでは、「地域」に根ざした伝統工芸を見ていくことで、まちと工芸の関係性・そしてその可能性を探りたいと考えています。

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