1年間で半年しかオープンしないレストラン
エル・ブジっていう、世界一予約の取れないレストランがあったんだけど、そこがなかなかに科学すぎて面白い。どう科学かって言うと、機械でなんでもかんでもムース(エスプーマ)にして提供しているところとか、そのレシピを公開したりとか。世界一予約の取れないレストランって聞けば、ミシュラン三ツ星シェフがいっぱいいて、都会の一等地に構えていて、そこでしか味わえないみたいな、グランメゾン東京みたいな世界観を憶える人が多いと思うけど、実際は真逆だった。料理人はシェフじゃなくて機械、立地は山奥、しかもレシピは公開、店内はガラス張りだから、調理シーンも丸見えどころか、厨房に招待しちゃう。レストランていうより研究所みたいな語呂だなあと感じる。また、1年間で半年しかオープンしないってところも面白い。ブランディングで半年しかやりませんってしているわけではない。このエスプーマの研究に半年使っているそうだ。
この中で最も科学なテイストが入っているのは、レシピを公開しているところだと思う。これらすべてが価値として認められているなら、もっとクローズにして希少性高めてブランディングに力入れたら大儲けできたはずだろう。にもかかわらず、半年かけて研究したレシピも調理シーンも公開しているところが、アカデミックな部分でいう論文、デジタルな部分でいうとGitHubに近いと感じた。
オープンソースの有益性
エル・ブジのエスプーマ以外にも、オープンソースでものすごい結果を出したものは他にもある。直近では、オードリー・タンのJoinやv台湾、さらにはパンデミックを封じ込めることにつながった全民健康保険(日本でいう健康保険制度)のオープンソース化が挙げられる。さらに、Joinやv台湾のメカニズムの1つにもオープンソースのPol.isが使われている。
なんでこんなにもオープンソースが強いのか。理由はいくつかあると思うけど、僕は、ファーストオーサーがわかることとか、ユーザーに課題設定の主導権の付与、大まかな合意性(≒フェア)の確認みたいな、査読を経ても限りなく近い答えしか出ない世界がもたらされることだと考える。結果、競争がなくてもブランディングに繋がるのだろうなあと。
工芸のオープンソースの考察
研究者ってかなりアーティスティックな側面が強いと思っていて、問いを自分で決める作業ってまさにゼロイチだし、この部分は、オープンソースの有益性の1つの課題設定の主導権に近い。この問いの発想から裏付けるにはを組み立てて定義して実験してって、インスピレーションな部分もあるはずってところも考えられる。自分が工芸で何を表現したいか、どう表現するかを考える工程と似ている。じゃあ、工芸もオープンソースにしたってアーティストの精神性は残るわけだし、ファーストオーサーを残せるから職人のブランド価値は維持・向上できるし、限りなく近い答え(≒対象の工芸品)の中で自身のクリエイティブの表現の思考(≒課題設定の主導権)があるし、メリットはかなり多いと考えている。
まあ、1番は工芸への参入障壁は下がってユーザーが増えるなら、どんな形であれ工芸自身の保存はできているから課題の1つは解決できるんじゃないかなって思ってます。