こんにちは。とらくら一期生のなこです。
今回は、着物業界誌「きものと宝飾社・ステータスマーケティング」編集長の松尾俊亮様にインタビューさせていただきました。松尾様は、着物業界のマーケティングを元に雑誌を発行してらっしゃいます。とらくらメンバーの白江となこが、若者に知って欲しい着物業界の現状についてお聞きしました!
呉服業界、メインのお客さんはどんな人なのでしょう
40〜60代の方々です。これは今だけでなく、ずっとそうです。この年代になると、お仕事もリタイアされたり、お子様も成人なさったりするため、時間的にも金銭的にも余裕が出てきます。そう言った方々が、お華やお茶などの習い事をきっかけに着物に興味を持ってくださるようです。また、ご自宅で眠っているお母さまの着物を着られたら、という思いで着付け教室に通い始める方も多いです。特に、かつて海外経験がある方は「日本の着物を着られるようになりたい」と思うようです。
では、若い世代にはどのように着物を着て欲しいですか
正絹の着物を一式揃えると、結構な金額になります。若い方々が気軽に着用するのは現実的ではないでしょう。無理して買うことはありません。ですが、新品でも浴衣であればお手頃なものもたくさんある。また、リサイクル着物であれば、結構安く手に入りますよ。まずはこういったものから、着物の楽しさを味わっていただけたら嬉しいと業界全体でも思っています。
着物が「高いもの」になってしまったのはなぜなのでしょうか?
江戸時代には庶民も着ていたじゃないか、ということですよね。その時代に人々が着用していたものは麻や綿の、しかもリサイクル着物がほとんどでした。今イメージするような、装飾が豪華な絹の着物は皇族や富裕層の人々が着るものだったんです。京都にお店が多いのは、皇族御用達で発展したからです。
時はすぎて1970〜80年代、日本の呉服業界は最盛期を迎えます。この頃はウールの着物が大量に作られ、大量に売れました。なぜだと思いますか?戦後、景気がよくなってきて、人々が憧れだった「着物」を求めたからです。さらに、この頃は嫁入り道具として着物を持たせるのが当たり前でした。そしてお母さん達は年に数回の授業参観なんかに着物を着て行ったのです。お正月にも着物を着る風習が残っていましたね。でも、この時はさらにそのお母さんたち(当時の60代以上)が娘に着物を着せてくれていました。彼女達は、着物を日常的に着ていた世代だったんです。
しかし、徐々に嫁入り道具としての着物が消滅していきます。みんな、持っていても着ないことに気が付いたんでしょう(笑)それに伴って、着物を着られる人もいなくなっていきます。着られる人が減れば、着ようと思わなくなる。そうすると、着物は売れなくなります。売れなくなれば、作らなくなる。そうして、一部の富裕層が着用するような絹の豪華な着物だけが残ったんですね。でも、こうした着物は「職人」が時間をかけて作っている「作品」です。そのため、どうしても値段が高くなってしまうんです。
とても興味深いお話ですね。着物は、他の日本の文化とも深く関わっていることを感じます。
ここで少し話題を変えて、着物業界の今の課題についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
はい。今の課題、というとやはり情報発信でしょうね。呉服屋さんや着物メーカーは60代、70代が多いため、SNSは難しいです。SNS自体の流行り廃りもありますからね。若い人にやってもらおうと思っても、新しく雇う余裕がないところもある。それに実際、SNSをやって情報発信してみても、成果が出ないとやめてしまうこともあります。
ですが、呉服業界は不特定多数にアピールするというよりも、お客様との人間関係を大事にするところがあります。だから、もともとあまりSNSでの情報発信に力を入れようとならないこともあるのでしょう。
なるほど。今とらくらでは「kimonoto」という企画があり、Instagramで着物にまつわる情報発信をしています。こうした活動からも、少しでも着物業界の発展に協力できるように頑張っていきたいです。
最後に、若い人たちに伝えたいことはありますか?
着物業界がどうなるかは、お客様がどんな要望を持っているかで決まります。誰も着物なんて興味ない、となれば、縮小していかざるをえません。
もし、着物に関心を持ってくれているのであれば、リサイクル着物や浴衣を楽しんでみてください。それが、将来も「着物」文化が続いていくことに繋がるでしょう。
編集後記
業界全体をみている方ならではのお話をうかがえ、とても興味深かったです。海外に住んでいた方が着物に興味を持ちやすい、という話は、とらくらメンバーでも海外経験によって日本文化に関心を持った人が何人かいることと同じだなと思いました。
また、いろんな文化と着物の関係性を探るのも面白そうだと思いました。そして、そうした魅力ある情報を、これからもとらくらを通じてたくさん発信していきたいと感じました。自分の暮らす土地の文化を、将来世代につなげていくために。
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取材協力:きものと宝飾社・ステータスマーケティング編集長 松尾俊亮氏
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取材:白江、なこ
記事執筆:なこ