着物ってどうやってカタチができるの?和服縫製のプロに聞いてみました!

INTERVIEW

こんにちは!とらくら一期生のなこです。

https://torakura.com/?author=11

今回は、「アシスター」の代表・松井さまにお話をお伺いしました。

アシスターさんは広島県・福山で着物の”仕立て”を行っている会社です。近年縫製業界は海外への委託が多くなる中、国内での縫製にこだわり仕立てをされています。また、ここ数年では商品開発にも挑戦するなど、常に新しいことを取り入れていこうとする姿勢も併せ持った企業です。

着物の仕立て会社ってどんなことをしているんですか?

アシスターでは、社員・パート合わせて約50人規模で工場を運営しています。会社の前身は、私の祖母が和裁士として開いていた和裁教室です。教室は昭和49年に始まりました。その後、多くの技士を育て、工場としてやってまいりました。平成以降はミシンを導入したり、しみぬきなどのお手入れもするようになっています。また、インバウンド向けの羽織を作ったり、織本さんとのコラボなど企画をしたりもしています。

着物の仕立てのうち、ミシンでの仕立てが6割、資格のある和裁士(現在10数名在籍)による手縫いとお直しが2割、あとの2割はしみぬき等のお手入れです。年間7〜8千の着物を仕立てています。

着物・浴衣などジャンルごとの比率はどんな感じなんでしょうか。

 10年前までは絹の着物が多かったんですが、今は化繊や木綿の反物がとても増えました。前は98%くらいが正絹だったんですよ。今は半分くらいでしょうか。フォーマルなものが減って、普段着としてのカジュアルなものが増えている感覚です。フォーマル、というのは黒留袖(結婚式で着る)や黒紋付(お葬式で着る喪服)、訪問着(かしこまった時に着る)などのことです。振袖はずっとやっていますけれど。

 浴衣は、普段なら5〜6月はそればっかり!というくらい浴衣ばっかりだったんですけれど、新型コロナの影響でお祭りがなくなり、需要が減ったようです。今は全然ありません。ちょっと寂しいですね。

コロナの影響がこんなところにも…。現在の着物業界全体の課題はどんなところだと感じますか。

 最近、本当に廃業してしまうところが多いと感じます。新型コロナの影響だと思います。今までなら、何かとイベントなどで着る機会もありましたが、今はそういったものが本当に無くなってしましましたからね。だからこそ、着物に関わるものとして、もっと着物の楽しさを広げていかなければと思っています。着物というと、どうしても「知識がない人が着てはいけない」と思われているようです。実際はそんなことありませんよ。例えば、着物の下に何を着たらいいのか?とよく聞かれます。私は、基本、何を着てもいいと思います。

今は洋服も含めて、海外での縫製が多いかと思います。国内の工場でやるからこその良さってどんなところでしょうか。

 そうですね。現在は反物の70%~80%くらいはベトナムなどの海外で仕立てるのが普通です。それに比べて、国内でやることの強みはやはり「短納期」だと思います。うちでは8時間仕立てというのもやっています。これはBtoC向けに始めたものです。従来の手縫いだと、一ヶ月くらいはかかる。機械であっても、早くて2〜3日かかります。そこを、複数人で分業して取り組むことで、一日で仕立てられるようになっています。せっかく国内で、工場としてある程度の人数を抱えてやっているので。

なるほど。お客様との物理的距離が近いからこそできることがあるのですね。

少し話は変わりますが、着物に関心を持ってから気になっていたことを一つ質問させていただいても良いでしょうか。と言いますのも、仕立てのための採寸項目、たくさんあってよくわからないのですが…。

身長、体重、スリーサイズがあれば最低いけますよ!裄丈(ゆきたけ)(うなじの中心から手首までの長さ、袖の長さのこと。)もわかるとありがたいですが。ただ、洋服の袖のサイズとは違うので注意が必要です。まあ、裄のサイズは身長から大体割り出せるんですけどね笑 そんなに難しく考えなくていいということです。

最近は長めに作って、着付けで融通していただくことも多いです。

また、丈感もご注文いただければ特殊なサイズで仕上げできますよ。コートのような、はっぴの長い版みたいなものも作れます。

最後に、これから着物デビューをしたい若者にメッセージをお願いします!

まずは家族や知り合いのものなど、身の回りにあるものから着てみると良いでしょう。初めは無理にお金をかけないで、もし近くに少し知識のある人がいればどんどん聞いてみて。そして何より大切なのは「やってみる」ことです。緊張するかもしれませんが、一度着物を着て、出かけてみてください。難しく捉えることはないです。一度やってみたら、きっと着物の楽しさに気が付くんじゃないでしょうか。もしそれでも勇気が出ない方は、お友達と「一緒に」やってみるといいかもしれませんね。

編集後記

 仕立て業界について今まであまりする機会がなかったのですが、松井様のお話を伺う中で着物がお客さんに届くまでの流れが掴めたように思います。どんな製品でもそうですが、原材料から私たちの手元に届くまでには、たくさんの人の手がかかり、思いがこもっていることを再認識しました。良さを引き継ぎながらも時代に合わせて新たな挑戦をされていく姿勢をみて、こうして伝統が引き継がれていくのだ、と感じました。

 松井様、ありがとうございました!

伝統工芸学生アンバサダーとらくらは「伝統工芸を未来と世界に」をビジョンに活動する学生団体です!

なこ

なこ

都内の大学三年生です。日本の染織を中心に、幅広く日本文化について学んでいます。 趣味は写真、音楽(サックス)、喫茶店巡りなどです。

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