前編では、自分たちにとっての工芸とは何か立ち返り語り合った。後編はいよいよ、伝統工芸アンバサダー「とらくら」を通して発信したいことを等身大で語る。
今回対談したのは
山田璃々子(慶應義塾大学3年)
お茶が織りなすリズムに心惹かれ、キッチンカーを用いたカフェをつくったりお茶農家さんと一緒にお茶を販売してきました。その経験を通じて「お茶の個性をもっと自分の目で見て聞いて触って伝えられるようになりたい」と思うようになり、全国の茶畑を巡っています。とらくらでは、歴史の文脈から「お茶」について考えていきます!
吉村萌(立教大学3年)
新選組を始め日本の歴史に中学生の頃ハマり、日本文化に興味を持ちました。
とらくらでは私の好きな日本の歴史に工芸がどのように関わってきたのか皆さんと一緒に紐解いていきたいと思っています。
この記事のポイント
・何をもって「継承」というのか
・伝統工芸を選びたいと思う人が選べたり、学びたいと思う人が健やかに学べる仕組みが作っていきたい
・「とらくらで伝統工芸を等身大で考えている過程そのもの」をみなさんと共有していこう
伝統工芸アンバサダー「とらくら」を通して発信したいこと
山田:「工芸」には暮らしの知恵がつまっていると思っていて。いつかの時代のどこかの誰かからの贈り物ってところについ心惹かれるの。そういう「つい心惹かれる」感覚を共有していけたらいいなと思う。
吉村:一方で「とらくら」と関わるにつれて工芸を継承していこうと思いつつ、なぜ継承しないといけないのと言われたときに正確な答えが出せないところが自分の中では残ってるんだよね。何をもって「継承」というのか、技術を受け継ぐことなのか、今あるものがこれから先も壊れずに残っていくことなのか、とらカレ(※1)でも話に出たように、DXで手仕事を機械化して機械が作れるようになっていくことなのか、、、。なにを「継承」と指すのか今はまだ答えが出せないのが正直なところ。
山田:うんうん。むしろ断定しないことが大切なんじゃないかなって思っている。結論を急がず、迷ったり、試している過程を共有していけたらなと。そういえば、先日、お茶農家さんに手揉み茶を作らせてもらったときに教えてもらったことがあるの。
吉村:なになに?
山田:「手揉み茶(※2)」って機械化が進む前の主流の製法だったそうで、機械化が進んだ現在は多くの茶農家さんが機械を使っていらっしゃるみたい。ただ、「手揉み茶」の技術は「茶農家さんたちの教科書」になってるのだって!!例えば、お茶が乾燥していく過程を機械だとなかなか感じにくい。けれど手を動かすことによってお茶の作られ方を五感で学ぶことができるのね。「教科書」として手仕事が残るっていう残し方もあるのか、とその時思ったんだよね。そして時代の流れとともに移ろうことはむしろ自然なことだと知ったよ。だから、伝統工芸を選びたいと思う人が選べたり、伝統工芸を学びたいと思う人が健やかに学べる仕組みが作れたらいいのかなと思ったりする。
吉村:機械化を進めつつ、手での継承の両立を図るか。いいね。ただ、なかには絶対に手仕事じゃないと「工芸」とは言えないみたいな考え方もあって、、、。これから先、機械化が進んで安価なものが沢山出回るであろう世の中で手仕事を継承していくためにも、伝統工芸品の生産を機械化し、価格を下げて民衆が手に届きやすい工芸をつくっていくことも大事かもなと最近、思うようになってきた。
山田:まさに「工芸5.0(※3)」の考え方だね!「工芸5.0」を推し進めることで、喜ぶ人は誰なんだろ?とか、、、。ここは私もじっくり考えていきたいな。
吉村:そうだね。「誰が」という話に続くと、作家さん、売り手、買い手、全員が何か幸せになれるサイクルはあったらいいなと思う。現状、三者って考えがバラついてるように思えて。この間、職人さんが国産のものを使った手仕事は高品質で高価格。けれど高品質なものに触れて欲しいなと。売り手は今の時代の流れに合った流行ものを、ターゲットに合わせた価格で売りたいって。 そうすると、お店で高価なものを取り扱うのは難しくなってきていて。消費者は消費者で、できるだけ安価なものを買いたい。代替品が沢山ある中で高価なものを選ぶのは難しくなっているんだってさ。なんかそこのずれをもう一度 1本の線に戻すニュータイプの工芸の売り方ができないのかなって。
山田:なるほど!「工芸品」を売ろうとすると、「もっと安く買えるものあるでしょ」とか「他にもいろいろあるよ」と言う議論になるのかなと思っていて。私は必ずしも「工芸」を買いたくて買ってるわけじゃないなあと、めぐちゃんの話を聞いて思った。そうするとなんだろう、、、?あ!「暦と一緒に生きる暮らし」を買いたいなと思って「工芸」を買っているのかな!暮らしの知恵を自分の中に取り入れたいと思って「工芸」を見ているなって今ふと思った。そして「工芸が与えてくれる良さ」を、共有する方法をいろいろと考えていたいんだなって!とらくらとしても、結論を出すことに急ぎすぎず、「こういう風に思ってるんだけどみんなどうですか」と、、、。等身大で考えている過程をみなさんと共有していたいな。作り手でも売り手でもない私たちができることって多くの人と一緒に考えたり、考えようと思うきっかけを届けたりすることなのかなと思うんだ。
吉村: 確かに、納得!とらくらメンバーの話を聞いていると、工芸に対する考え方って三者三様だから。どう考えているか、こういう考えだったらこれからどうしていったらいいのかとか、いろいろお互いに意見を共有する場としてとらくらがもっと機能すればいいな。そうしてゆくゆくは、Z世代が考える今後の「工芸との向き合い方」みたいなのが言語としてできるのかなと予想してる。
※1とらカレ・・・正式名称はとらくらカレッジ。これまでそしてこれからの「伝統工芸品」について、講師をお招きして考える勉強会。
※2手揉み茶・・・人の手のみでつくるお茶。針のように伸びた茶葉が特徴。
※3 工芸5.0・・・一般の人が工芸を当たり前のように手にする時代。
編集後記
「工芸」の伝統は今も刻々とつくられている、つくっていることを実感するひとときでした。これからみなさんと一緒に、「工芸」を共有できる時間を楽しんでいきたいなと思います! (山田璃々子)
私は工芸だけではなくて日本文化を日本人(近しい人)に伝えていきたいんだという発見がありました。工芸や日本文化の良さってなんだろうきっと答えは出ないこの問をこれからも感じながら考えていきたいです。(吉村萌)
ー最後までご覧いただきありがとうございました。