今回は幕末から明治にかけて活躍した柴田是信(1807〜1891)について紹介します。
是信(ぜしん)について
江戸両国の袋物・煙草具商の家に生まれた是真は、11歳から蒔絵を学び始めました。(蒔絵とは漆芸の加飾技法の1つです。漆で絵を描き、漆が固まらないうちに金粉や銀粉をまいて付着させて装飾します。)16歳から四条派の絵画を習いはじめ、23歳になると京都留学して絵画技術を習得します。
漆芸分野では、従来は分業で行われていた下絵から蒔絵までの過程を自ら一貫して行いました。また、古い技法を復活させたり、新たな技法も発明しています。さらに、漆絵という作品を生み出し、絵画や工芸という枠を超えた活動を行いました。
漆絵とは?
漆絵とは言葉通り、漆で絵を描いたものです。是真の漆絵に使われたのは、黒・茶・朱・緑・黄色の5色でした。これらは、漆に顔料を混ぜて作られます。なぜ5色に限られていたかというと、漆の液体そのものが茶色く、彩度の高い色漆を作ることが難しいためです。しかし、漆の精製方法や顔料の量などを調整することで、濃淡や明暗を変化させることができます。すると、5色という制限を感じさせないほど華やかな絵になっています。(現在は様々な色漆が開発され、白以外のほとんどの色を作ることができます。)
最後に
漆絵という新たなジャンルを生み出した是信。漆絵を工芸に含めるのか、含めないのか、様々な意見があると思います。しかし、こうして先人の方々が挑戦してくださったからこそ、今の芸術、今の工芸があるのだと思います。私たちも工芸の新たな可能性を探っていきたいです。それではまた。
参考文献
ZESHIN -柴田是信の漆工・蒔絵・絵画-
発行年日:平成24年11月1日
編集:根津美術館学芸部