明治工芸の超絶技巧
京都清水の観光地、ところ狭しとお土産物が並ぶ産寧坂に溶け込む美術館。
その名も”京都清水三年坂美術館(きょうときよみずさんねんざかびじゅつかん)”
京都の観光地らしい門構えの入口を通り、お土産売り場を抜けた先の、決して大きくはないスペースに、並べられた美術品を一目見て引き込まれました。
「すごい、人間技じゃない」
歴史や美術の知識に疎い私でも、直感的に見て取れるデザインの緻密さと繊細さ。
七宝・金工・蒔絵・象嵌・京薩摩、詳しい技法を知らなくてもわかる圧倒的な美。
刀の柄、重箱、ティーカップなど、元々は実用性を持って生まれた1mに満たない大きさのどれもが、職人技により、永遠に見ていられる味わいを醸し出し、静かに楽しめるエンターテインメントを提供していました。
平和だからこそ、生まれた美
展示品それぞれに簡潔に記された説明文を読みながら、既視感を覚えていました。
「江戸時代、戦争がなくなり鎧や甲冑を作っていた職人が、龍の玩具を制作した。」
「明治以降に刀狩令や廃藩置県で刀の需要がなくなり、印籠の造形がより煌びやかになった。」
『平和になって工芸が洗練された』
地球の反対側コロンビア・カリ市にある黄金美術館で、ラテン美人ガイドさんに聞いた話とよく似ています。
「時代ごとに造形品が並べてあるけど、後の時代の方が簡素なのは戦争をしていたからなのよ。」
人間ひまな時ほど、芸術に手を掛けるようになるのはどこも同じなんだなとぼんやり考えながら、全ての美術品を閉館までくまなく見て回りました。
きっと歴史や工芸の知識を付けていったらもっと面白いのだと思います。だけど、そんな小難しいことが嫌いな方にも是非、訪れてみてもらいたいです。時間が一瞬で過ぎます。
日本の職人の創造力って、ほんっとすごいなぁ。